top of page

心の棘。

 カウンセリングをしていると、幸せになりたいと誰もがいう。そう言われると「僕も!」と応じたくなる。


photo:02

 「どんな状態が幸せなの?」と聞くと「悩みがない状態」と言う。「目くるめく幸せ」「天にも登る気持ち」はないわけではないと思う。でも、それは「永遠」ではなく、「瞬間」だから素晴らしいのではないだろうか。幸せの瞬間が永遠だとそれを感じる心もマヒしてしまい幸せも色あせてしまう。トラウマ(心理的外傷体験)を取りたいと言う。このトラウマと戦うことが余計にトラウマを深刻化することにも気づかずに•••••自己啓発セミナーでも「あなたのトラウマが三日で無くなる」「あなたの親子関係のトラウマを取らないと、今のあなたの問題は解決できない」と言われて気になっている相談者や僕の心理学コースの生徒にも多く見られる。過去にそのように言われて多額の費用を払って不安をあおる危険な自己啓発セミナーに行った人の多くはパーフェクト・ワールド(完璧な世界)を求めていた。カルト宗教に入信する人もそういう世界を求めている。僕は誰にも「心の棘(トゲ)」があると思っている。心にいくらかでも気になる棘がある。だから、誰かに優しくなれると•••••「棘」は劣等感や、過去の失敗でも、誰にも言えない悲しみや、ふれられたくない秘密かもしれない。または、慢性の疾患かもしれないし、いつかくる別れの予感かもしれない。誰でもが人には言えない棘がある。だから、人は謙虚でいられるのだと思う。もし、何も心の棘が刺さっていない人がいれば、僕はいないと思うが、そんな人は忘れているか気づかないだけかもしれない。でも棘の痛みを持たないと豪語する人に会ってみると、なんだか尊大で他人の痛みへの配慮に欠けるような人柄が多いように思えます。棘があるから、人は謙虚でいられる。愛の価値を知るのは、孤独を知っているから感じるのだし、健康の喜びは、病気の悲しみを知っているからこそ健康を噛みしめられる。今の幸せも、悲しみを乗り越えてこそ感じるもののようです。でも、今の幸せの中にもやはり棘は依然ある。その刺さった棘がウズキ出すことを知っているから•••••「今のここ」にある瞬間の幸せにも感謝できるのです。いつかは儚く、消え去るのがこの世界。この世界は、この瞬間にも移り去り、流れ去る中の「今、ここ」の瞬間を僕たちは生きています。


photo:01

 その儚さを知っているから、僕たちは「Here and Now」の一瞬を味わうことができるのです。幸せは行く所ではなく、「今、ここ」が幸せなんだと感じる心の中にこそ心の充足は存在するのです。僕は心の棘を抱えながら生きている人に感動します。棘の痛みを持ちながらも笑っている人に心の強さを感じるから。何の棘も刺さったこともなく笑える人は幸せ者ではあるかもしれません。でも、僕はそんな人に魅力を感じない。心に棘があるから調子に乗ることなく、人に優しくなれるのです。自分が欠けていることを知っているから、欠けている他人をかばっている包帯の中の痛みに優しくできるのだと思えるのです。それでも、あなたはパーフェクト・ワールドを求めます?だから、あなたの世界は今も欠けているのかも•••••インディアンの言葉におまえの世界が完璧になるのは、おまえが心の目を開いて、完璧な世界などないと知った時に、おまえの世界は完璧になると•••••


photo:03
日本メンタルヘルス協会:衛藤信之のつぶやき

コメント


Canva_スクール会場PC.png

Copyright © 日本メンタルヘルス協会|心理カウンセラー資格取得・スキルアップ All Rights Reserved.

bottom of page